市街化調整区域に旅館・ホテルがなぜ建築されているのか調べてみたら、意外と面白かった。

市街化調整区域に旅館・ホテルがなぜ建築されているのか調べてみたら、意外と面白かった。

[memo title=”いきなり結論”]

〇建築に厳しい制限のある市街化調整区域といえど、貴重な観光資源を有効に使うためにホテル・旅館の建築は認められる可能性がある。

〇同様の理由で観光客向けの飲食店・土産物店も建築が可能である。

〇観光資源に認められるものとして、温泉、史跡、名勝、天然記念物等の文化財などが挙げられる。

〇各自治体ごとにルール(=条例)があり、それに基づくことで開発許可を取得することが可能となっている。

[/memo]

観光資源を有効利用するために、都市計画法34条2号がある

第三十四条

二 市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

出典:都市計画法 e-Govウェブサイト

内容:観光資源と鉱物資源などの有益な資源を有効利用するためには、市街化調整区域でもこれに関連する施設の建築を可能としています。

※もちろん許可が必要です。

市街化調整区域だから、ホテルや旅館を建てちゃダメ!となっていないわけです。

都市計画法は究極的には良い街を作るための法律です。

ちゃんと観光業界のことも考えているわけですね。

この法律のおかげで、あなたが今年行った温泉街の入浴施設で温泉を楽しんだり、ホテルに泊まることが出来たと思えば、夢が広がりませんか?

[say name=”みみ” img=”https://55smile.biz/240926bk/wp-content/uploads/2019/08/5a832922bb7d603e273a02b39194f9d4.jpg”]ちなみに鉱物資源は、金銀だけでなく石炭、硫黄などの”鉱物”を指しているよ。これらを利用するための施設は建築できる。[/say]

市街化調整区域の観光資源ってどんなものを指しているの?

ここで1つ疑問が生じます。

青木さんの家の裏にある池が良い景色だから、「これも立派な観光スポットだ!」といって市街化調整区域に旅館が建つものでしょうか。

そんなムリが通ってしまえば、事実上何でもありになってしまいそうです。

そうなると、やはり開発許可を出す自治体にも判断基準が必要でしょう。

調べてみると、やはりこれにはちゃんと根拠がありました。

(観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成)
第十三条 国は、観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成を図るため、史跡、名勝、天然記念物等の文化財、歴史的風土、優れた自然の風景地、良好な景観、温泉その他文化、産業等に関する観光資源の保護、育成及び開発に必要な施策を講ずるものとする。

出典:観光立国推進基本法  e-Govウェブサイト

どうやら史跡、名勝、天然記念物等の文化財、歴史的風土、優れた自然の風景地、良好な景観、温泉その他文化、産業等は立派な観光資源のようです。

[say name=”すばる” img=”https://55smile.biz/240926bk/wp-content/uploads/2019/08/70e183cf13277317cb6ad93b719b92ed-e1567387288921.jpg”]みんな大好きな温泉も観光資源として認められているんだね。[/say]

[say name=”小森谷” img=”https://55smile.biz/240926bk/wp-content/uploads/2019/08/a9f357c06210fb5db7f2cfbf6762d5ec-e1567231372381.jpg” from=”right”]この他にも、有名な神社やお寺とかも観光資源として認められる余地がありそうだよ。[/say]

これらの観光資源が付近にある土地では、市街化調整区域といえども建築が出来そうです。

青木さん宅の裏にある池は、優れた自然の風景地に認められない限り、ちょっと厳しいかもしれませんね。

観光資源として市街化調整区域でも建てられるものを調べてみた

静岡県御殿場市の基準が非常に具体的かつわかりやすかったのでご紹介します。

対象となる建築物の用途
観光資源の有効な利用上必要な建築物の用途は、次に掲げるもののいずれかであること。ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条各項に規定する営業を行う施設及びそれに類似する施設を除く。
(1) 宿泊施設
主に観光資源の観光を目的とした者を対象とし旅館若しくはホテルであること。
(2) 飲食店
観光資源における観光客を対象とした飲食店であること。
(3) 土産物等販売店
物産品、地場産品又は土産物の販売若しくは観光資源に関連する物品の販売を主たる目的
とする店舗であること。
(4) 公衆浴場
観光資源における観光客を対象とした公衆浴場であり、かつ、温泉法第2条に規定する温泉を利用する施設であること。
(5) 展示場等
観光資源に関連する展示場又は資料館であること。
(6) 維持管理施設
観光資源の維持管理施設(展望台、維持管理事務所、観光案内施設、休憩施設、立体駐車場又は公衆便所等)であること。
(7) その他
上記(1)から(6)までに掲げた施設以外で、観光資源の有効な利用上、市長が特に必要な建築物と認めるもの。

出典:御殿場市 都市計画法第34条第2号(観光資源) 令和元年9月以降 第2編立地基準

このように、観光資源に有益なホテルや旅館はもちろんのこと、温泉施設や観光案内施設、休憩施設、トイレなどを建築できるようになっています。

これらの許可基準を読む限り、”観光資源を目的に来た観光客向けの建物”であるかがキーポイントになりそうです。

なのでパチンコ店・ゲームセンターなどの遊戯施設等、観光資源を活用するにあたって必要とは認められそうにないものは除外されます。

また、街の景観を損ねるラブホテル等はきっちりと排除されているのも読み取れます。

ちゃんと自治体は色々と考えているんですね!

建築許可が出そうな立地ですが、御殿場市のケースですと観光資源の存する敷地から概ね500メートル以内がキーポイントになるようです。

国道沿いなども許可が出る基準に入っています。

これらの審査基準は、各自治体で用意されていることが多いですから実際のところは実地調査する必要がありそうですね。

まとめ

今回は”市街化調整区域に旅館・ホテルがなぜ建築されているのか調べてみたら、意外と面白かった。”というテーマで解説しました。

今回はあくまでも市街化調整区域での旅館・ホテルがテーマです。

市街化調整区域はとにかく建築の制限が厳しいのですが、調べてみるとちゃんと最低限必要とされる建築行為については許可が出るように設計されていたりするものです。

ただし実際のところは、各自治体の条例や審査基準で細かく調査しないと実現可能かは分からないため難易度が高いと思います。。

類似案で思いついたケースとして、”非線引き区域での旅館・ホテル建築”や”都市計画区域外での旅館・ホテル建築”なんてのも考えられます。

これらについても、調べればきっと答えが見つかるはずです。

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