水は高きより低きに流れる
このことわざをご存知でしょうか?
文字通り、水は高いところから低いところへ流れていきます。
この事実は重要なポイントです。
雨が降ったら終着点は必ず低地(周囲より低くなっている土地)です。
また、河川が氾濫したら最も冠水の被害が出るのも低地です。
そして上記2つのどちらも身近な存在であるのが”田んぼ”なのです。
むしろ水害の方が怖いかもしれません。
参考記事:【冠水被害】水害地域で家を買う前に知っておきたいことまとめ【水災】
水と地盤の関係
水分を沢山含んだ土地は軟弱です。
昔、泥んこ遊びをしたことがありますよね?
水と土を練るとぐちゃぐちゃした泥になります。
これが土地の下にいっぱい詰まっているのが軟弱地盤だとイメージしたら分かりやすいかもしれません。
水の集まるところは水分の多い土地となり、土もドロドロになります。
常に水が集まりやすかった土地というのは地盤も弱くなっていきます。
気の遠くなるような年月を経て、地盤が弱くなっていくのです。
反対に水がたまりにくい高台とか、丘とか山は地盤が締まっていき強くなっています。
地盤の専門家では土質(どしつ)と言って、10メートル前後の深くまで土の性質を分析して地盤の強さ・弱さを判断したりします。砂や粘土系の土が多い土地は軟弱地盤であることが多いです。
田んぼ(=水田)は低地のため軟弱地盤になる運命
何十年も、時には何百年も前から水田だった土地について考えてみましょう。
水田は稲作・お米を作るために水を大量に消費します。
水は近くの川や水路から引いてくるでしょう。
水を引くには土地を下げなければ引けません。
水は高いところから低いところにしか移せません。
だから田んぼは必ず周囲の土地より低くなっています。
田んぼは水を溜めるダムとも言えます。
低地にある田んぼは雨が降るたびに水がたまる
これも当然です。
周囲の土地より低いから、田んぼは周囲の道から、畦(あぜ)から、隣の畑から、四方八方から水が注がれます。
こうして水田には自然と水が集まります。
田んぼの土は常に水分の多い土地となり、土質も泥~粘土っぽい感じになっていき軟弱地盤となっていくのです。
田んぼの埋め立て期間について
田んぼは埋め立てないと家が建てられない
田んぼは低地です、道路よりも50センチとか1メートル近くも下がっている土地にそのまま家を建てることは出来ません。
雨が降るたびに水びたしになり、車を駐車することも段差があっては物理的に無理ですよね。
なので土を大量に持ってきて埋め立て工事をします。
家を建てるところは盛り土工事をして大量に土を盛りますから、ブロック塀の高さも普通の住宅地に比べて必要になります。→費用が嵩む。
田んぼの隣は大体が田んぼです。
地盤面の高さが1メートルくらい異なることも多いので、その分ブロック塀には土の圧力(=土圧)による負担がかかります。
なのでブロック塀は擁壁仕様だったり、擁壁クラスの強度のあるものを採用する必要がありますので高額になります。
みみ
田んぼを埋め立てたら寝かせるべきか
昔の人は「田んぼは埋め立てたら数年寝かせろ」と言ったりしたようですが、今では盛り土工事をしてから半年程度で家を建てることも多くあります。
昔と違って家の真下にしっかり地盤改良工事を行っているからです。
田んぼの場合、市街化調整区域であることも多いので家を建てる前の準備(=農地法の許可・開発許可・適合証明申請)をしたりしていきます。
小森谷
というわけでして、盛り土工事をした家は10年間ほどは何らかの形で地盤が沈下する可能性がゼロではないようです。
何十年も家を見てきたベテランの一級建築士の意見ですから、参考になると思います。
田んぼの埋め立て期間で10年間も置いていたらその間に家を建てることを忘れてしまいそうです。
だから地盤改良をしっかり施す、最適な工法を提案されたらケチらない方がよっぽど良いと考えます。
現在の地盤保証は最低10年、長いと20年もついていたりしますので安心ですね。
その際には、保証内容にも目を向けて、万一の事態になった場合の補償額をチェックしておきましょう。
埋め立てた土地=地盤のしまりが弱い
前述のとおり、埋め立てた土地というのは、どうしても土地の締まりが悪いです。
転圧をしっかり行えば解決するかというと、そうでもありません。
土は最近盛って埋め立てたばかりですからね。
土が柔らかいとも言えますし、土質が異なるので安定しません。
どうしても弱い地盤になります。
反対に強い地盤(=硬質地盤ともいう)は必ずと言って良いほど土地の締まりが良く硬さがあります。
田んぼ=水はけの悪い土地=軟弱地盤
田んぼは水はけが良くありません。
砂のように水をさらっと吸収しませんよね?
水田はどうしても水はけが悪くなります。
水はけが悪い土地というのは大量の水を必要とする稲作にとっては最高ですが、家を建てるとなると良くありません。
泥状の土、ぬるりとした粘土っぽい土が多い田んぼの土地は水はけも悪く、地盤も弱いのです。
小森谷
水はけが悪いことの問題点・デメリット
- いつまでも水が引いてくれない。
- 雨が降ると庭がぐちゃぐちゃになってしまう。
- ジメジメしていて湿気が気になる:酷い場合は家に悪影響を及ぼす可能性
- 家庭菜園・ガーデニングを楽しめなくなる
ここら辺は可能性としてある程度覚悟しておかないといけません。
日当たりの良い土地なら乾きも早いですが、日当たりが悪いとさらに厳しくなります。
小森谷
田んぼの地盤改良でかかる費用はどうなる?
地盤改良ありきで予算を組むべき
お話ししてきたとおり、田んぼの地盤は決して良好なものではありません。
地盤改良費用はあらかじめ組んでおくべきです。
地盤改良の費用
これは結論から言うと、地盤調査によって地下の強い地盤=”支持層”がどれだけ深くにあるかで金額が変わります。
田んぼであっても、強い地盤=支持層が浅い5メートル前後にあれば割安で済みます。
仕事柄、依頼をしてきたときの経験で語りますと30坪程度の2階建ての家で60万~100万円程度で済むでしょう。
強い地盤=支持層が10メートル程度の深さになると、割高な印象となってきまして予算は100万円~150万円以上欲しいところです。
小森谷
このように、田んぼの地盤改良費用は他の土地と同じく支持層の有無を基本に考えて良いと思います。
田んぼだから特別な補強工事をしなければなりませんと確定するわけではないです。
参考リンク:ジオテック株式会社 支持層 地盤補強工法
昔は田んぼだった住宅地・駐車場もある
ここら辺も注意しておきたいですね。
田んぼはいきなり家が建てられる宅地になるだけではありません。
とりあえず埋め立てをして、月極の駐車場なんかにしてからその土地が売りに出るパターンもあります。
キレイな住宅地に見えても、ついこの間まで田んぼだったりすることもあります。
そんなカンタンに土地の性質は変わりません。
以下の記事を参考にして、空中写真(=航空写真)をチェックしたり、過去の土地の利用歴を住民の方から聞いたりしてみましょう。
参考記事:地盤が弱い!軟弱地盤の問題点とカンタンな見抜き方・対策まとめ
参考記事:近所の聞き込みと近隣調査のやり方。~建売・土地の後悔しない購入方法~
田んぼだった土地でも問題なく暮らしている事例も沢山ある
この事実も覚えておきたいですね。
日本は江戸幕府の徳川政権以来、おコメ作りが全国各地で行われてきたわけです。
田んぼは全国どこでもあるのに、そこで安心して家が建てられなかったら日本では住むところがありません。
田んぼだったところは地盤が弱い傾向がありますが、全く実害なく暮らしている方も沢山います。
むしろ造成工事・地盤改良工事・建築工事をしっかりと行うことができれば、ほとんど問題なく暮らせるのです。
埼玉県の久喜市や加須市は私の専門ですが、田んぼを埋め立てて造った家はゴマンとあります。
規制緩和されたと言っても開発許可は必要なため、そのノウハウと資金力のあるパワービルダーが沢山の家を建てました。
参考記事:新築一戸建ての売主パワービルダー一覧を公開。建売住宅を買うなら必読。
自治体の規制緩和によって、田んぼにも家を建てることが出来るようになってから数え切れない家が新築されました。
条件はありますが、かなり家を建てやすくなったのは事実です。私の実家の周りは大東建託さんのアパートだらけですが、これも規制緩和によって市街化調整区域の田んぼでも家を建てれるようになったからです。
田んぼだった土地が毎回軟弱な地盤によって問題化していたら、市町村・自治体がまず黙っていないでしょう。
小森谷
まとめと超軟弱地盤の個人的な体験談
今回は”田んぼの地盤=最悪?地盤改良は費用が高額になるかも考えてみた。”というテーマで解説しました。
土地の利用歴が田んぼだっただけなら、相当の数の家を建てて売買をしてきましたのでそんなに警戒はしません。
適切な予算決めと対策方法を習得したためです。
しかし、川が近くにあって恐らく数千年とか数百年とかの単位で氾濫の被害にあっていた地域の田んぼだけはとても苦労した記憶があります。
市内で考えても、一番低いところにある土地だったかもしれません。
いわゆる後背湿地(こうはいしっち)と呼ばれる土地です。
参考リンク:国土地理院 後背湿地
作ったばかりのブロック塀が斜めになって崩れかけたり、作ったばかりの道路が沈下しました。
”もう無理です。この土地はどうにもなりません”
とベテランで経験豊富な工事監督が言ってきた時に後悔したことがあります。
ここまでのレベルになると家を建てることの不安も凄いし、土地の価値も大幅に下がるのはわかりますよね。
やっぱり、レベルにもよりますよね。
それ以来、しっかりと地盤については学んでおくべきだと痛感したのでした。
その経験から軟弱地盤の見抜き方・判別法を習得したといっても過言ではありません。
【地盤が弱い土地の特徴】見抜き方を痛い目を見てきた経験者が語る下記よりLINEでお気軽にお問い合わせください!